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【書評】人工知能の発展は人類滅亡につながるのか!?「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(松尾 豊著)

先日、グーグル傘下のグーグル・ディープマインド社が開発した
囲碁の人工知能「アルファ碁」と「世界最強の棋士」と言われる
韓国のイ・セドル九段が5番勝負を行い、
「アルファ碁」が4勝1敗と大勝したニュースが世間を賑わせました。

その報道の際にキーワードとして挙げられた「ディープラーニング」。
これは一体何なのでしょう。
今回は「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」をご紹介します。

なぜ今まで人工知能が実現できなかったのか。

現在世界は第3次人工知能ブームを迎えているそうです。
第1次は1950年代後半~1960年代。
そして第2次は1980年代。
つまり人工知能の研究がスタートして
すでに60年ぐらい経っているんですね。

しかしこの半世紀以上、多くの人たちの期待を裏切り続け、
本当の意味での人工知能は実現できていませんでした。

その理由は本書によると次のように述べられています。

いままで人工知能が実現できなかったのは、「世界からどの特徴に注目して情報を取り出すべきか」に関して、人間の手を借りなければならなかったからだ。

つまりある画像を読み込んで、
コンピュータがこれはネコだと認識できるようにするには、
ネコというのは…

◎4本足の動物である
◎体は毛で覆われている
◎ヒゲがある
◎ニャーと鳴く
◎柔らかな肉球がある…、その他多数

といった特徴をコンピュータに教える必要がありました。

しかし、その特徴、つまりネコの概念は人間が考えて、
コンピュータに教えるしかなかったのですね。

そして、認識する精度を上げるためにはどんな特徴を選ぶかが重要ですが、
それは人間が頭を使って考えるしかありませんでした。
それには膨大な手間がかかってしまい、研究は遅々として進まなかったのです。

ディープラーニングの登場で人工知能の研究が加速。

そんな研究の停滞を打ち破ったがディープラーニングという方法。
データをもとに、コンピュータが自ら特徴量を
つくり出すことができるようになったのです。

これにより一気に人工知能の研究が加速する可能性が出てきたわけで、
筆者は「人工知能の50年来のブレークスルー」と呼んでいます。

ディープラーニングの登場により、一気に現実味を帯びた人工知能。
果たして、人間を超えるのでしょうか。
筆者はイエスと答えます。
そして様々な産業にインパクトを与えるだろうと予想しています。

といっても「2001年宇宙の旅」や「ターミネーター」で描かれたような、
人工知能が暴走して人類を脅かす未来は来ないと断言します。

例えば、人類より優れた知能を備えたロボットが、
仲間を生産しようとしたら、鉄や半導体のような材料はどうするのか?
自分で作るのは大変だから人間から買う…というのは非現実的。
それではウイルスのように増殖するプログラムなら?
でもプログラムは1ヶ所でも間違いがあれば動かなくなるのに、
おそらくそんな巨大プログラムを試行錯誤せずにつくるのは…ほぼ不可能。

それよりも、軍事応用や産業上の独占などのほうが脅威だと主張します。
例えば人工知能を組み込んだ昆虫サイズの小型兵器をテロリストが持ったら…
あるいは、PCのOSをマイクロソフトがほぼ独占しているように、
ある企業が人工知能のコア技術を独占してしまったら…。

あれ、これって人工知能だけでなく核兵器なんかも同じですね。
つまり怖いのは科学技術ではなくて、それを使う人間ってことです。

そして人工知能がもたらす世界についてこのように述べます。

人工知能が開く世界は、決してバラ色の未来でもないし、決して暗黒の未来でもない。人工知能の技術は着々と進展し、少しずつ世界を豊かにしていく。明日、いきなり人工知能が世界を変えるわけではないし、かといって、その技術の進展を無視することもできない。

結局、大切なのは社会をよりよくするために、
人工知能をどう活かせばいいのかをしっかり考えること。
そのカギを握るのは私たち人類一人ひとりということですね。

人工知能の歴史、現状、未来をわかりやすく解説した名著です。

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