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【日本映画】この世に真実なんてない!あるのは人それぞれが都合良くねつ造した記憶だけ。「白ゆき姫殺人事件」(中村義洋監督)

今回はAmazonプライムで見た「白ゆき姫殺人事件」をご紹介します。

美人OLが殺された。犯人は…

原作は湊かなえの同名の小説。
ストーリーはこんな感じ。

ある日、美人OL(菜々緒)の惨殺死体が発見される。
ワイドショーのディレクターをしている男(綾野剛)のもとに、
その同僚という知人女性(蓮佛美沙子)から、
犯人はある女(井上真央)だというタレコミ電話が!
真相を求め、男は関係者への取材を始めるのだが…。

そう書くと、いかにもありがちな
サスペンスドラマにしか思えませんよね。

でも、Twitterが効果的に利用されていること、
登場する俳優さんがそれぞれの個性をうまく演じていること
により、
2時間チョイをしっかり見せる映画に仕上がっています。

自分の都合のいいようにしか見ない人間

この映画のテーマの一つとなっているのは、
人間は自分の都合の良いようにしか物事を見ない。
そしてそれを真実と思い込んで記憶へとしまい込む
、ということ。

この映画で描かれていた、
職場の美人OLと地味なOLに対する
上司の言動が印象的だったので例として紹介します。

お客さんが来た時、その上司は地味なOLにお茶をいれるよう指示し、
美人OLにそのお茶をお客さんに出すように言い渡します。

その言動だけを見ると、あからさまに美人OLをひいきして
地味なOLを差別するゲスなオヤジ
のように感じます。

でも後に出てくるシーンで、その上司は過去に
美人OLがいらつきながら急須に茶葉を山盛り入れている姿を
目撃していることがわかります。
つまり、美人OLはお茶をいれるなんて仕事は私がすることじゃない…
という強烈な思いを持っていることを知っていたのです。

だから彼はお客さんに出すお茶をいれることは、
きちんとやってくれる地味なOLに頼んでいるんですね。
でもそれをそのまま地味なOLにお客さんに出させると、
プライドが高くて目立ちたがり屋の美人OLはひがんでしまう。
そのため、美人OLにはいかにも彼女が好きそうな
「お茶出し」という派手な仕事を任せているのです。

そのことがわかったらどうでしょう。

セクハラ差別上司と思っていた中年男は、
女性社員一人ひとりの個性をしっかりと把握した上で
最適な仕事を任せている思慮深い上司
ということになりますね。

そんな感じで、どんな意図でそういった言動をしているのかは、
実際には本人にしかわかりません。
でもその言動を見聞きしたまわりの人間は、
それぞれが自分勝手に解釈して記憶してしまう
記憶というのは意図的にしろ、そうでないにしろ、
その人によってねつ造されたものなのです。

個性的な登場人物も魅力

登場人物は全員がとても個性的なのですが、
俳優陣がしっかり演じていました。

中でも印象に残ったのがワイドショーの司会者役の生瀬勝久。
深刻そうな顔して事件のレポートを聞いているフリをして、
実のところは何も考えていない。
誰でも思いつくようなありきたりの感想を述べて、
「さあ次の話題です」となる。
いい加減でしたたかな、いかにもいそうな司会者です。

主演の井上真央は、
頑張って何の特徴もない地味なOLを熱演していましたが、
時々“美人さ”が出てしまってましたけど、それはしょうがないか。

それにしても日本人って、
というか人間ってみんなゴシップが好きですね。
そして最近では獲物を見つけると、
マスコミもネットもこぞってフルボッコ状態に。
飽きたら次の獲物を探す。
人間の本質なんだろうけど、狂ってますね。

<予告編>

<映画データ>
監督:中村義洋
出演:井上真央、綾野剛、蓮佛美沙子、菜々緒、貫地谷しほり、金子ノブアキ
再生時間:2時間6分

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