今回は「昭和芸人 七人の最期 (文春文庫)」をご紹介します。
エノケン、ロッパ、金語楼など7名の晩年を紹介
昭和の戦前から戦後に活躍した7人の芸人の生き様を描いた作品です。登場するのはエノケン、ロッパ、金語楼、エンタツ、石田一松、シミキン、トニー谷。一世を風靡した芸人たちが絶頂期から最後に向かって、どのような晩年を生きたかを時代背景も交えて紹介しています。紹介されていた7人のうち興味を持って読んだのは金語楼とトニー谷。二人ともリアルタイムでの活躍を少し知っているからですが、知っていると言っても金語楼がジェスチャーの司会をしていたことと、トニー谷が「あなたのお名前なんてぇの」とやっていたぐらい。例えば金語楼に5人の「妻」と8人の子供がいたことなどはこの本で知りました。
筆者は1979年生まれのダウンタウン世代
タイトルだけ見ると昭和初期から長らく演芸を見続けてきた人の作品と思いきや、この本の筆者は1979年生まれで私より19歳年下。ということは取り上げてある全員をリアルタイムで見ていないことになります。それを文献や資料を丁寧に調べ書き上げたのには恐れ入ります。そして引用してある文章が実に的確。アマゾンに「現代の笑いと昭和の過去と行き来し、そして膨大な資料から鋭角的な引用をズバズバと決めてみせる」というレビューがありましたが、まさにそんな感じ。そして驚いたのは筆者はケロリンで有名な内外薬品代表取締役社長だということ。社長業だけでも激務だろうに、その傍らこのような作品を仕上げるとは!
現代のお笑いを知る世代ならではの視点が秀逸
「彼らの芸を見たこともないやつが…」という批判も見ましたが、「金語楼は元祖リアクション芸人」といった視点は、今のお笑いを知る若い世代ならでは。そして、ロッパの声帯模写は人気歌舞伎俳優の声で童謡を歌うといったようなもので、
今風に言うと、「もしも六代目尾上菊五郎が『鳩ぽっぽ』を歌ったら」というスタイルである。
と、現在のお笑い好きにも非常にわかりやすい比喩で紹介してくれています。昭和史としても非常に楽しめる名著です。