今回はわかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)をご紹介します。
「わかった」は読み手の錯覚に過ぎない?
文章を一読して「わかった」と思っていても、
後からその内容について質問されると正解が浮かんで来なかったり、
間違って答えてしまったりということは結構多くあります。
つまり「わかった」のではなく「わかったつもり」に過ぎないんですね。
この本では「わからない」より重大な、「わかったつもり」を
どうすれば克服できるかを解説しています。
同じ文章を読んでも、全く別のことを読み取ってしまう怖さ。
本書の中で面白かったのが、人というのは同じ文章を読んでも、
与えられる条件によって書かれてもいないことを読み取ってしまうこと。
例として挙げられているのが「男の朝の支度」について書かれた文章。
何も知らされず、この文章をまず最初に読むと、
男が朝に身支度をして新聞を読んで、
何本か電話をかけてから出かけるところまでを
表現をしている文なのだなと思います。
ところが、その男が「失業者」であると想定してもう一度読んでみろと言われると、
その文章には一言も書いてないのに読んでいるのは新聞の求人欄で、
電話は面接のアポイントメントだと、感じてしまいます。
そして次に、その「株仲買人」であると想定してもう一度読んでみろと言われると、
これまた文章に一言も書いていないのに読んでいるのは新聞の株式欄で、
電話は売買の指示をする電話であると、読み取ってしまいます。
このように、人は書かれてもいないのにわかったつもりになって、
勝手に読み取ってしまうものなのですね。
日常的によくあることですが、結構怖いなと感じました。
必要なのは「わかったつもり」であることを認識しておくこと。
それでは「わかったつもり」を克服するにはどうすればいいのでしょう。
筆者はまず自分が「わかったつもり」の状態にあることを
認識しておくことが必要だと言います。
そして、当たり障りのないきれいごとが出てきたら
適当に自分なりに解釈して読み飛ばしてしまわないか注意すること、
また、文と文との「矛盾」や「無関連」を見つけたら、
その部分をどうにか矛盾がないよう解釈できないか、
また関連づけられないか考えることが必要だと言っています。
一度「わかった」と思ってしまったら、そこで思考は停止してしまい、
それ以上一歩も進みません。
だから一度読んだぐらいでは「わかったつもり」状態であると
自覚しておくことが重要だと言います。
毎日、いろんな文章を読んで「わかった」と思ってきた私。
それって、ほとんどが「わかったつもり」だったかもしれないですね。