この日、宇都宮で仕事が終わったのが15時20分頃。せっかくここまで来たのですから1時間ぐらい軽く飲んで帰りましょう。で、宇都宮と言えばまず思い出すのは餃子。実際、駅付近には餃子専門店が数多くあって、この時間でも餃子にビールなら比較的簡単に楽しむことができます。でもこの日はなんとなく餃子じゃなくて、ごく普通の居酒屋で飲みたい気分。というわけで駅付近で普通の居酒屋を探すために、とりあえずJR宇都宮駅西口に行ってみます。
駅を背にして見ると西口駅前にはこんな風景が広がっています。
黄色い看板に大きな赤ちょうちんの店に決定!
一帯を15分程度歩きまわりながら探したのですが、結局決めたのはこのお店。その名も「どっこいしょ」!
黄色に赤の不思議な字体で「どっこいしょ」の文字。その横には全長1.5メートルぐらいの店名入りの大きな赤ちょうちんが据え付けられています。入口付近にはたくさんの黄色や赤の提灯が吊され、ノボリ、メニュー、看板、ポスターが雑然と配されていてカオスな空間。店名も雰囲気もかなり微妙ですが、15時半時点で営業中の居酒屋はここぐらい。これ以上探し回っても時間の無駄と判断し、入ってみることに。
入口付近はかなりのカオス状態
で、矢印の指し示す所から恐る恐る中に入ると、壁にはビッシリと手書きメニューや誰のものだかわからないサイン、角ハイボールのポスターなどが貼られていてここもカオス。手書きメニューをよく見ると「ウロンハイ」や「ぎょうくちゃハイ」といった日本語勉強中の方が書いたようなものも…。それにしても「ウロンハイ」はまだわかりますが「ぎょうくちゃハイ」って「緑茶ハイ」のことなんだろうけど、どこをどう間違えるとそうなるんだ?…といった疑問を抱きながら、赤い店名入りプレートの矢印に誘われB1へと歩みを進めます。
そして階段を降りていくと…。
踊り場にはおすすめメニューが書かれた赤いメニュー看板。その下にはやはり井川遥さんが「ね、」。
さらに階段を降りると入口に到着。紫色の暖簾があり、壁にはよしず、白紙に赤の太マジックで手書きの店名プレート、そしてここでも井川遥さんが「角ハイボールがお好きでしょ。」と微笑みかけてくれています。
キャパは80名程度と予想以上の広さ。
一瞬ためらいましたが、これはもう入るしかないでしょう。井川さんの微笑みに勇気をもらい、思い切ってガラス戸を開けます。「いらっしゃいませ」という声を期待していたのですが無言。一歩入って店内を見ると男女二人組の客らしき姿が2組見えます。店内にはまったりした空気が充満しており、手前のテーブルで飲んでいるカップルの女性に睨まれました。どうやら営業しているみたいですけど、店員さんらしき人が見当たりません。仕方がないので入口奥の厨房をのぞいたところ、調理中の男性を発見。「すいません。一人ですけど大丈夫でしょうか」と声をかけると、「いらっしゃいませ。どうぞ~」という声。ホッとして空いていたカウンターの中央付近に座ります。そして1分後ぐらいに先ほど声をかけた男性がオーダーを聞きにカウンターへ。とりあえず「生ビール(中)」(600円)を頼みます。お通しは青菜のおひたし的なもの。
クビッと飲んで、一息ついて店内を見渡すと、店内は予想以上の広さ。カウンター、テーブル、中華風の円卓、小上がり席などいろんな席があって、キャパは全部で80名ぐらい。壁際にはどこのものかわからない木彫りの人形や店名が書かれた板などが雑然とディスプレイされており、手書きの短冊メニューの間にはやはり井川遥さんの角ハイボールポスターがありました。テレビでは甲子園の高校野球中継がやっています。
先ほどからの店内の様子から察するに、この時間は60代ぐらいの店長さんらしき男性一人で切り盛りしている模様。ということは私の豊富な経験から考えるに、焼き物や揚げ物、炒め物といった手間がかかるものはなるべく避けるのが賢明です。ということでつまみとしてオーダーしたのはこちら「冷奴」(200円)。
案の定1分ぐらいで出て来ました。小ぶりですけど、まあこれはこれで全然OK。
ビールのあとは酎ハイに移行し、郷土料理も追加。
10分ぐらいで生ビールを飲み干し、次は酎ハイを頼もうと思うものの、店長さんは他のお客さんのつまみを調理中のようです。5分ほど前に一組の客が帰ったのですが、いっぱいいっぱいらしく、グラスの片付けもまだ進んでいません。
しばらくしてつまみが出来上がったらしく、持って来た帰りをつかまえて「酎ハイ」(400円)をオーダー。
ビールの中ジョッキより一回り小ぶりのグラスで供されます。横に写っているのは一緒に追加で頼んだ名物料理「しもつかれ」(400円)。
このようにかなりアレなビジュアルなんですが、メニューによると宇都宮地方名産料理とのこと。今回餃子はパスしましたが、せっかくなんで何か土地のものをと思って頼みました。調べてみると栃木県の中部から北部地域を中心に、北関東や千葉、福島の一部地域で食べられている郷土料理。細かく刻んだ大根とニンジン、大豆と鮭の頭を酒粕を入れて煮込んだもの。酒粕の風味なのかな、発酵食品系の香りがかすかにし、適度な塩気があってつまみとしてはまずまず。鮭の頭は骨まで柔らかく煮てあり、口に入れるとホロリと崩れて面白い食感。サバ缶なんかに入っている骨部分のようですね。特に意図はありませんけど、アップの写真を載せておきます。
入店前はやや不安もありましたが、入って飲み始めればなんか妙に落ち着く空間です。16時15分過ぎになり、ようやく女性店員さんが出勤してきたようです。これで店長さんが一人オペレーションから解放されると思うと、こっちまでなんかホッとしました。で、酎ハイをもう一杯追加でオーダー。それを飲み干してお愛想すると2300円と明朗会計。レジで店長さんに何時からやっているかを聞いたところ、午後3時からと昼飲みファンには嬉しい開店時間。レジ横にこんな名刺があったのでいただいてきました。
なるほど「独来庶」ですか。インパクト十分の当て字です。特に「庶」。私だったら「所」としてしまいますが、大衆居酒屋ということで「庶民」の「庶」にするところなど、なかなかのセンスです。「独りでも来てね、庶民のみんな~」というところでしょうか。そして階段を上り出口すぐのところの井川遥さんのポスターに見送られ、店を後にしたのでした。
ごちそうさまでした。
<地図>
<店舗データ>
◎住所:栃木県宇都宮市駅前通り3-1-8
◎交通手段:JR「宇都宮駅」から徒歩2分
◎営業時間:15:00~24:00